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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第29章 果たされぬ・・・約束

俺は…空を眺め

目線を下ろすと

ポケットからマリアの手紙を取り出した




『・・・』



消えない罪と…色褪せない想い





俺は…閉ざした自分の心と

ようやく向き合っていく





『っ…~っ…っく・・・ぅ…っ』



砂浜で、ひとり手紙を読む俺の目からは

やはり涙が落ちてきた



砂の上に落ちては消えていく涙





アイツが必死に届けてくれた声

俺が…耳を塞いだ・・・マリアの声



俺が…置き去りにした

マリアの・・・想い







そんな・・・マリアの想いを

俺は…ようやく受け止める







腑抜けだった…卑屈だった俺が

新たに…純粋な希望を抱いた気がした





こんな俺でも
この先、前を向いて生きていけば

誰かの人生に…小さな幸せを
届けられる人間になれるかもしれない

俺に…俺なんかに
〃逢えて良かった〃

そう言ってくれる人に
この先、出逢えるかもしれない


エリカや

誰より

あの・・・マリアのように






〃『道は…どこかで繋がっている』〃





また・・・マリアの言葉がよみがえる




どんな…些細な事でも良い

この先の人生で俺の成すことが



どこか・・・めぐりめぐって

遥か遠く…彼方で



いつか…どこかで繋がって

マリアに・・・小さな幸せを

届けられたらいい




それが…どんなに遠く

些細な事でも良い



全く関係ない誰かに

ほんの少しの親切をすることでもいい



時には偶然、巡り逢った誰かの

心の痛みに

ほんの少し寄り添うだけでもいい




時には誰かの人生に

ほんの少しの〃道標(みちしるべ)〃を

灯してやるだけでもいい




ほんの少しのやさしさや思いやりが

めぐりめぐって

マリアに・・・幸せを届けられますように





そして・・・俺にもいつか

誰かを本当に

幸せに出来るかもしれないから





そうやって…歩んでいく





そんな俺でありたいと

俺は、そうやって生きたいと思った





アイツが

マリアが・・・心から願ってくれたように






〃俺・・・ちゃんと生きるぜ〃







マリアの想いを受け止めた俺は

読み終えた手紙を閉じて

海を眺めながら





マリアの手紙を・・・そっと燃やした

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