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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第7章 守りたい・・・

『ねぇねぇ…ゆぅちゃん
何か手伝うことない?』


最近マリアから
頻繁にこんな言葉を聞く。



〃最近〃・・・?

自分で思って、少しゾッとする。


麻痺していくってのは
こういう事かもな。


俺はマリアが時々
俺の家に逃げ込んでくる事に

そんな日々に
どこか慣れてきていたんだ。


マリアが駆け込んで来ることが
それが悪いとかナントカって意味じゃなくてさ


俺・・・
マリアが旦那から様々な
精神的暴力を受けたり

辛い目にあってるってことに
その事実に
慣れちまってる…


そんな気がして
なんかモヤモヤっとしてたんだ。






『良かったらお洗濯する?』


〃ただ泊めてもらうのはちょっと・・・〃
なんて言って

マリアは控え目にだけど
俺の家の中の事を手伝ってくれたりする。


俺は一番初めの宣言通り
〃タダ、泊めてやる〃
のスタンスは変えないでいたんだけどさ


マリアが居づらいなら…

そうすることでバランスが保てるなら
それでいいかな…って
思ってさ


マリアの提案には
極力甘えてた。




にしても、モヤモヤするぜ。





こんな・・・

妙な関係をいつまでも続けることに
良いことなんてないのだから。



俺がしてやれるのは
あくまでマリアの一時避難の手伝い。



これを続けていても
マリアが自由になれるわけでも

幸せになれるわけでもない。





何より…

こんな、名称のわからない
妙な関係を続けることは

お互いの身に
大きなリスクをもたらす。


やましいことは何もない。

友達…というのも変な感じだ。

家出妻と保護者?

そんなモン、世間一般に
通じる言葉じゃない。

・・・下手に発覚すれば
ありとあらゆる誤解を招く。

そんなことは既に
暗黙に、当たり前にわかっていたんだ。
俺も、マリアも。


かといって他にどうしようもないから
お互いそこにはもう
触れなかったけど。


このまま・・・ってワケには
いかねぇよな。



だからと言って
少なくとも俺は

マリアをただ放っておくことも
もう出来なくなっていたから

マリアを保護する必要がある時は
常時そうしていたんだ。

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