かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第16章 瞬間(とき)の・・・悪戯
『はぁ・・・いっそのこと認知拒否
されたら…楽なのにな』
マリアは決して後ろ向きなことは言わないが
一緒に調べものしたり
今後の話し合いなんかすると
時折こんな言葉をもらす。
マリアにとって
自分の生活より、体のことより
一番気がかりなことに間違いはないから。
お腹の子は…間違いなく旦那の子だ。
俺の子だったら…最も厄介だったわけだが
この件に関してはマリアの弁護士も
頭を悩ませているのが現状
実際に相手がどう出てくるかわからないから
妊娠を理由に復縁を迫られるかも知れない
(変わった旦那だから俺は一番この可能性を
心配してる…)
逆に、認知を拒否して…それこそ
「俺の子じゃない」「浮気しただろう」
などと逆に揉める事になるやも知れない。
それは弁護士的にも最悪のケースらしい
(但しそれは実際に夫の子でない場面が多い)
…あまり本人が口には出さないし
俺と話し合った時にマリアが・・・ほんと
一瞬…ポロっとこぼしてた事だけど
(←ちょっと前の話な?)
マリアの中の…最も最悪は
一番恐れていることは
子どもを・・・旦那や
旦那の家(実家)に取られてしまうのでは
ないか、ということ。
お腹の子は〃非嫡出子〃ではない。
間違いなく…その〃夫婦〃の子だ。
離婚には応じるが子どもは別だ…なんて
言ってみれば弱みを握って〃嫌がらせ〃
される、ごねられるようなケースも
決して少なくないみたいなんだ
子どもを父親にとられる
可能性は低いと言われてるらしいが
マリアは社会的立場が決して強くない。
絶対に…とは言えない。
揉める事になるのは最悪だが
マリアにしてみたら、いっそのこと
「俺の子じゃない」とでも言われた方が
いくらか気が楽ってことだ…。
まぁ…あくまでもマリアのケースに
のっとった話であって
マリアの弁護士の見立てだけどな・・・
にしても、なんにしても
まだ生まれてもいないのに
頭の痛い話だな…。
頭が痛い・・・それは
一番その不安を煽るのは
相手が、まだなんの動向も見せないこと