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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第17章 翼を・・・ください

救急車を待つ・・・わずか数分

たかが数分の間に

どこからともなく集まった人々で
人だかりができる



ごくごく一部…
手を貸そうとしてくれる人もいれば



その大半…9割は
俺の大声や異常を察知して

興味本位にガヤガヤと集まってきた
ヤジウマだ




どっかいけよ・・・テメーら


見てたって…なんもなんねぇだろぉが




人ってのは・・・〃人の不幸〃が

大好きな生きモンだ・・・




〃人の不幸は蜜の味〃・・・




己に降りかかりさえしなければ

それほど面白いモンはねぇんだろうな



所詮は・・・他人事だから








『マリアっ!!しっかりしろ!?マリア!』


『・・・・・・』



俺はマリアを抱えたまま

ひたすら救急車の到着を待った





一瞬のこと・・・

わずか一瞬…たった一瞬の出来事





ついさっきまで

ほんの数時間…数十分…

ついさっき、数分前まで



こんな事が起こるなんて

誰も思いはしない



俺もマリアも・・・これっぽっちも

思いもしなかった




こんなわずかな瞬間に・・・

一体、運命(だれ)が…

何の因果で…


何のために・・・

こんな悪戯(イタズラ)をするんだよ・・・













『マリア!大丈夫だからなっ?!

すぐ病院に…!…大丈夫だからなっ!』




『~~っ・・・ゆ・・・ぅ』






マリアはお腹以外を一切庇わなかった…




頭打ったかもしれない・・・


迂闊に動かしたり出来ない


何よりは・・・













サイレンが聞こえて救急車が到着する


おそらくは数分の時間…


発狂しそうなまでに緊迫していた俺には
重く…長い


何時間にも感じられた








「大丈夫ですかっ!?」

救急隊員が駆け足で降りてくる




『そこの階段から…落ちて
身体、強く打ち付けました』


俺は動揺と必死に闘いながら隊員に
説明をする



隊員がマリアを診察して
搬送先の病院かどっかに連絡してる・・・




俺・・・

言わねぇと・・・早く



俺・・・言わねぇと



『あの・・・』



「~の女性、階段から転落…*#&@#%

意識は~~…」


















『彼女・・・・・・妊娠してます』

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