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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第21章 覚めない悪夢(ゆめ)・・・

マリアが再び旦那の方に向き直る



『カズキ・・・それが
私の答えだから・・・』




『・・・そう』






『二度と・・・会いません』




『もしも、破ったら…わかってるな?』





『・・・カズキの好きにしたら良い
私は何も逆らわない

だから・・・さっきの話
あれだけは・・・』





『・・・いいだろう』






マリアを張り倒してでも
俺に殴りかかってくるかと思いきや


ヤツは時と手間を惜しむ
とでも言うように
マリアの手を引いて車に急いだ




『カズキ・・・』

『先に乗ってろ』




『ちょっと…待ってよ?!…』

『フフ…手を出したりしない
俺はまだそいつと話があるだけだ』





『カズキ…どうして?!それは…』



『うるさいぞ…いつまでも喚くな
〃事務的〃な話をするだけだ

バカだなお前は…?
咎めないと言ったからって

どこの誰かもわからない浮気相手を…
何も聞かずに野放しにするわけが
ないだろう…』





『でも・・・っ』




『フン……俺も忙しいんだ

訴えたり…
慰謝料の請求したりなんかしない

これでわかるか?』




『~~~~・・・』





『…わかったら早く乗れ』





ヤツがマリアを車に押し込んで
ドアを閉めると
俺の方に戻ってくる



別人のように淡々と
仕事でもするみたいに

俺に名前やら住所
質問を次々に投げていく





『血気盛んなのは勝手だか

節度はわきまえろ

あまり人の道を踏み外さない事だな』






コイツの言ってる事は

ひとつだけ正しい




最後にそれを吐き捨てると
ヤツはさっさと車に乗り込み
車を出した





マリア・・・





去り際・・・車の後部座席の窓に
張り付くように

マリアが
こっちをみていた



潤んだ瞳(め)で…俺を見て


〃『ごめんね・・・』〃



確かにそう唇を動かして



車に揺られて

去っていく・・・





地面に足が貼り付いたように
動けない



去っていくマリアも…俺も


まるであの悪夢の中にいるみたいだ



連れて行かれるマリアに
手も足もでない



叫んでも、喚いても…暴れても


助けてやれない



そんな悪夢は




現実だった・・・

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