原稿用紙でラブレター
第4章 超完璧溺愛主義
退屈だった講義が終わり、一斉に動き出す周りの学生たち。
俺はというと、そんな周囲から取り残されるようにその場から動けずにいた。
頬杖をつき、机に置いたスマホに目を落とす。
そこにはいくつもの新着メッセージの通知が並んでいて。
送り主はただ一人。
「…はぁ」
腕を倒してそのままずるっと机になだれ込むと、放置したままのスマホを恨めしく見つめた。
…最近、松潤からの束縛が激しすぎる。
前から薄々感じてはいたけど、まさかここまでとは正直思ってなかった。
俺が大学生になって自分の目が届かなくなったことで、俺の行動に対する制約がかなり増えたんだ。
サークルの女の子とは口を聞くなだの、
男友達は一度紹介しろだの、
教授から呼び出されても一人では行くなだの。
なんだよそれ!
俺は男だぞ!?
しかももうガキじゃねーんだ!
終いには『バイトはするな。そこで恋が生まれる可能性がある』とか言われて。
遊ぶ金どうすんだよって噛み付いたら、俺が養ってやるとか言ってたけど。
なんなんだよマジで!
俺のことなんだと思ってんだって!
つーか…
こんな関係ほんとに恋人なんて言えんのかよ。
俺のこと…
そんなに信用ねぇのかよっ…!
悔しくて思わず込み上げてきそうになり、グッと拳を握って堪える。
俺は…
松潤のこと、ちゃんと信じてんのに。
…なんで分かってくんねーんだよ。
ギリッと奥歯を噛み締めた時、傍らのスマホがぶるっと震えた。
また松潤か…と少し憂鬱になりつつ手に取れば、そこには違う名前が。
『翔ちゃーん!やっほー!\(^o^)/
ねぇ今からなんか予定ある?
もしなかったらちょっと付き合ってほしいんだけど!』
雅紀からのメッセージ。
そのいつもと変わらない文面に自然とモヤモヤが晴れていくようで。
すぐに返信をして、心なしか軽くなった体で待ち合わせ場所へと向かった。