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原稿用紙でラブレター

第2章 年上彼氏の攻略法






頭上にそびえる不規則に曲線を描く滑車路からは、悲鳴にも似た歓声が降ってくる。


松本先生の言葉で落ち着いていた"あのこと"が再発してしまって。


明らかに様子がおかしくなった俺を相葉くんが心配して、どこかで休憩しようと提案してくれたんだけど。


「じゃ、行くか相葉!」

「えっ、あ…」


絶叫系のアトラクションが苦手な櫻井くんと俺を置いて、松本先生は相葉くんを連れてジェットコースターの乗り口へと向かってしまった。


ガシっと肩を組まれて連れられる相葉くんが、チラチラ後ろを振り返って心配そうな顔を向ける。


『大丈夫』の意味を込め頷いて小さく手を振れば、ホッとしたような顔になって連行されていった。


ジェットコースターの下、取り残された俺たちの間に沈黙が流れる。


見上げると、クラクラしそうな程に高くそびえ立つ鉄骨の骨組み。


ちっとも落ち着かない気持ちと相まって乗ってもいないのに動悸がしそうになる。


「…よくあんなの乗れるよなぁ」


隣で同じく上を見上げて独り言のように呟く櫻井くん。


明るく染めた少し長めの横髪から光るピアス、端正な横顔に似合う晒された喉仏。



櫻井くん、昨日…



ジッと見ていると勝手に浮かんでしまう映像を、またふるふると頭を振って散らした。



「…先生」


地上にいるのに何となく傍にある柵を握って上を見上げていると、櫻井くんが独り言じゃなくて俺に向かって口を開いた。


「なんか…悩んでることあります?」


櫻井くんは上を見上げたままそう言って。



えっ…!?



思わぬその言葉にまた脳裏にあの映像が浮かび上がりそうになる。


鼓動が早まるのを悟られまいと何も言えずにいると、こちらを振り向いて窺うような瞳を向けられて。


「雅紀から聞いたんですけど…」

「…え?」



相葉くん…?


相葉くんが…何を?



言いにくそうにするから益々気になって、先を促すようにジッと櫻井くんを覗き込むと。


「あの…なんか変なヤツに付き纏われてるって…」

「…え?」

「学校で変な生徒にストーカーされてんじゃないかって、雅紀が…」

「ストー…カー…?」


眉根を寄せて不安げにそう言う櫻井くんの言葉に、皆目見当がつかず頭に疑問符しか浮かばない。

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