卑怯なボクは深海魚
第17章 【最終章】卑怯なボクは深海魚
在校生はホームルームを終え玄関に向かう――――…
さすがに卒業生は誰もいない
涙の解散だったに違いない
ボクもその場にいたら泣いてしまうかも知れない
そんなの…誰にも見られたくない――――…
そう言えば…先輩の制服のボタン…欲しかったな…
思いでの品って…持ってなかったから――――…
でも、そんなの女々しいだけかな?
別れたのに…
ボクは下駄箱から自分の靴を取り出す
――――――――…カラン…
「――――ん?」
取り出した靴と共に何かが飛び出し床に転がった
それは――――…
制服のボタン
「////――――…ぇ」
慌ててボタンを拾うと――――…
ボタンの裏に
“ごめん”
“ありがとう”
“さようなら”
と、書かれてあった――――…
もう、泣かないって決めたのに――――…
涙が目に溜まってくる
ありがとう――――…先輩
貴方を好きになって…
貴方で傷ついて…
貴方に愛されて…
ボクは幸せでした――――…
さようなら
ボクはグッと涙をこらえ――――…ボタンをポケットに入れて歩き出した
卑怯なボクは深海魚――――…
この気持ちを重りに…深海で生きていく
【完】