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夢鉄道

第1章 夢鉄道

「お、本日のお客様は、内面は別として、顔立ちがとても綺麗なお姉さんですな」

「誰っ!? 姿を見せて」

「まあまあ、私はいま、あなたの斜め前にいます。いま、あなたが闇の世界だと思っているのは、ただ、まぶたの裏を見ているだけで、ございます。ソッと目を開けるのです。あ、しっかりと開けないで、目を開けると思い込むのです。しっかりと開けてしまいますと、あなたは目覚めてしまいます」

 意味がわからなかった。でも、目を開けるのではなく、目を開けるつもりでイメージをしてみた。

 すると、心で思っただけなのに、まぶたが開くように、広大なスクリーンが姿を現した。

 私の前には、なぜか青く小さな物体がたたずんでいた。大きさは、162センチの私の半分くらい。

 それは、徐々に造形が浮き上がり、ハッキリと姿を現した。

 なにも衣類は身に付けておらず、白と黒に色分けされた、鼻の長い豚のような生き物で、直立不動で、私の方を舐めるように見ていた。

「ほう、やっと私のイメージができたんですな」

 喋ってたのは、お前だったのか……。

「えっ、あなたは何者?」

「私は夢列車の案内人、車掌のバクーと申します」

「バクー!? あ、だから、そんな動物の体型をしてるんだ」

「いや、私に本当の姿はございません。これは、あくまで夢を見ているあなたのイメージです。中にはイケメンホスト風にイメージされるかたも……あ、いまさら、イメージを変えたって、一度出来たイメージは変えられませんよ」

 そうだ……以前に動物園に行った時に、一番印象深かった動物だったんだ……失敗したな。

「失敗だったんですか?」

 心を読まれてる……。

「いえ、読んでるわけでは、ございません。ここは意識の中。声も筒抜けです」

 リアルに嫌だわ。

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