赤い糸
第15章 永遠
「大丈夫だよ、アイツ今外周走ってるから。」
この計画を思い付いたのは先週だった。
帰国を知らせる美紀とのLINEで京介さんを驚かせよう!って盛り上がって
「京介の顔見た?すげぇ膨れっ面でご機嫌ナナメもいいとこだったぜ。」
調子に乗った私たちは長谷川さんも佑樹さんもみんな巻き込んで京介さんをドッキリを仕掛けることになった。
そう、だから私が帰国したのは昨日の深夜。
「そりゃそうよ。今日という日を首を長~くして待ってたんだから。」
家で少しだけのんびりして 時差ボケの体を奮い立たせて迎えに来てくれた長谷川さんの車に乗り込みいつもの球場に足を運んだ。
「璃子ちゃん、緊張してる?」
「はぃ…ドキドキが止まらなくて…」
「なに言ってんのよ!そんなじゃ成功しないわよ!」
ここから先は魔女と呼ばれてるお姉さまたちも仲間に入ってもらって京介さんには驚いてもらう予定なんだけど…
~♪~♪
「うそ…」
「京介から?」
鳴り響くLINEの電話通知の音。
「どうしよう…」
外周を走ってるはずの京介さんからなんだけど…
スマホとみんなの顔を交互に見ていると幸乃さんは
「出てあげたら?」
クスッといつもみたいに笑うから 私は恐る恐る画面をタッチして
「もしもし…」
なるべく普通に聞こえるように言葉を紡いだ。
『おいおい…おまえまだ飛行機乗ってねぇの?』
すると溜め息混じりの呆れ果てた京介さんの声が私の耳に届いた。
「いやあの…その…」
『ったく…』
私の回りのみんなが声を抑えて笑ってる。
そう…知らないのは京介さんだけ。
『何時のに乗んだよ。』
「も…もうすぐかな?」
壮大な溜め息が私の耳に聞こえると京介さんは諦めたように
『こっちに着いたらすぐに連絡しろ。』
なんてぶっきらぼうに…でも優しく言葉を紡いでくれた。
その声が凄く嬉しくて
「ねぇ、京介さん…」
『ん?』
「早く逢いたいな。」
想いの丈を紡ぐと
『だったらお別れ会なんかに出てねぇでさっさと飛行機乗れば良かっただろ。』
「ウフフ…そうですね。」
込み上げてくる何かを抑えながら彼の笑顔を思い出す。
『璃子…もうどこにも行かせないからな。』
「行きませんよ。」
『だったら…早く帰って来い。』
優しく紡がれる言葉は私の頬を濡らすには十分だった。