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赤い糸

第4章 優しい心


「だってね、あの事故以来手も繋がないでくれないんだよ?」

実は今日の野球観戦に付き合ったのには気晴らしの外にもうひとつ理由があった。

だって美紀にしかこういう大人の話を相談出来ない。

「前まではその…してたんだよね?」

美紀は私のことを昔からスゴく子供扱いする。

「まぁ…一応…」

もう学生の頃の私じゃない。

キスだってその先ももちろんな訳で…

「そっか…そうだよね…」

なんか変なの。こういう話は美紀の大好物なはずだったのに苦笑いをしちゃって

「都合が会う週末はいつも一緒に…」

…ってあれ?

「達也さんと一緒に…」

…痛い

まただ…コメカミの奥が疼きだす。

美紀はすかさず私の席の隣に座り背中を撫でてくれる。

「ゆっくり息吸って…吐いて…吸って…吐いて…」

私は息を整えながらお守りのネックレスのトップを指でなぞると

「…うっ。」

…えっ!?なに!

一瞬私の目の前がフラッシュをたかれたように輝き

…Yシャツ?

何故だかカーテンレールにYシャツが並ぶ光景が一瞬映し出された。

でも、それは本当に一瞬の出来事で

「口で息吸って。」

私は美紀の言うとおり深呼吸を繰り返す。

「スーハー…スーハー…」

少しずつ痛みが治まるのと同時に私の中に何かモヤモヤとした感情が生まれてくる。

私たち週末、何処で会ってたっけ?

達也さんの家?それとも外?学会?

「大丈夫?」

「大丈夫…じゃない。」

職場以外で会う達也さんを思い出せない。

「急に変なこと言うから頭がショートしたんじゃない?」

こんなことおかしい。

私は目を瞑り大きく深呼吸する。

そして、大好きな達也さんを胸に想う…んだけど

「美紀…」

「どうした?」

瞼の裏に映し出される人の姿は

「私なんか変だ…」

「どこかおかしい?病院連れていこうか?」

連れてってもらった方がいいかもしれない。

「どうしたの?」

心配そうな顔して私の背中を擦り続けてくれる美紀にこんなこと言ってもいいのかな

「京介さんが…」

「京介さん? 」

「達也さんじゃなくて京介さんが…」

「うん。」

「私の頭のなかを…」

言葉ともに感情が爆発したみたいに涙が溢れる。

「…占領してる。」

美紀はなにも言わずに私を抱きしめてくれた。

こんな私と一緒に頬を濡らしながら…

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