
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第12章 予期せぬ……
「はぁ?? な、何をおっしゃっているのか、
さっぱりなんですけど……問題なんてそう大したもん
じゃないんです。ご迷惑おかけして申し訳ありません
ホラ、絢音早く降りろ。
ったく、あんまり世話を焼かせるなよ」
あいつが助手席のドアに手をかけたので。
カシュ ―― すかさずドアロックをかけた。
「あ、あれぇ~、あの、どちらさんか存じませんが、
これは一体どういう事で……?」
「彼女はしばらく私の方でお預かりします。
では失礼」
問答無用で、パワーウインドウを上げた。
車外では呆然と立ち尽くした池谷が
何ぞか叫んでいるようだったが、
もうこいつに用はない。
やっと絢音の頭を解放してやり、
助手席へ座り直させると、
絢音は自らシートベルトを締めた。
ゆっくりアクセルを踏み込む。
心地良い微かな振動と共に、
積もった雪を踏み潰し車が動き出した。
しばらく無言のまま走って。
途中見つけたコンビニのパーキングへ車を停めた。
車載のクーラーボックスに常備してある
アイスパックを取り出し、
「冷やした方がいい」
頬に当ててやる。
「ありがと、ございます……」
そして、再び車を走らせる。
警備の点から考えれば、
実家へ連れて行くのが一番の良策なのだが。
如何せん実家は廃業した暴力団の東京本部に
詰めていた若衆の約半数が共同生活を送っていて、
そんな所へヤクザに免疫のない女子を連れて行けば
ドン引きされる事請け合いだ。
それに ”早く身を固めて、初孫の顔を見せろ”と
小煩いおふくろが妙な勘違いをしないとも、
限らない。
オレは、昨夜と同じマンションへ彼女を連れて
行った。
