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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第8章 学校にて

  利沙には 『―― 和泉屋に就職する』なんて
  言ったけど、女将たる母・祥子からは、
  高2の夏に私を和泉屋で雇う気は
  毛頭ないと断言されていた。
  
  私はやっと1人歩きが出来るようになったような
  頃から、ずっと両親や和泉屋のスタッフさん達の
  仕事ぶりを間近で見てきて。

  中学に入った時には、母のような名女将には
  及ばずとも経営面から旅館を支え大きくする事は
  出来ると考えて、今日まで一生懸命、
  勉強してきた。
  

  こちらへ上京し叔母と対面して早々、

  『―― 絢音、お前の素質は経営面向きだと
   私も思うけど、若いうちから自分で自分の
   可能性を狭めるような真似だけはしないと
   約束しておくれね?』
   
  と、念を押すよう、言われてしまった。
  
  
  それと、姉ちゃんからは、

  『母さん、あんたが和泉屋を継ぎたいって
   言ってると分かった時は物凄く嬉しそうに
   していたわ。でもね、分かってあげて?
   母さんは自分がそうだったように、あんたを
   和泉屋に縛り付けたくはないのよ』 
  
  と、母さんの本音を教えられた。

  ”縛り付けたくない” か、ぁ……
  

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