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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第3章 導入部・その①

「―― すみませ~ん」


  近くの学校の裏門から小走りに出て来た生徒が声を
  かけてきた。
  3年生、和泉 絢音(いずみ あやね)

  彼女はクラスメイトの打ったホームランボールを
  彼の部活引退記念にしようと拾いにきたのだ。

  竜二は振り返って絢音を見て、何故かドキッとして
  立ち止まった。


「あ、あのぉ ―― ボール、投げてもらえます?」


  竜二は笑顔で答えた。


「あ? あぁ、もちろん」


  と、手元のボールを絢音に放ってから。


「ソレはキミが打ったの?」

「いえ、友達です」


  何となく絢音は竜二が自分を妙に長く見つめている
  ような気がした。

  私の顔に何かついてるのかな――?

  『フィガロ』のトイレでこの男と行きずりの
  セックスをした事などキレイさっぱり忘れている
  絢音は竜二にペコリと頭を下げるとクルリ背を向け
  裏門へ走って戻っていく。

  門を入る時チラリと見ると、竜二は足早に路肩へ
  停めてある車の方へ行ってしまった。

  何となくがっかりした。

  もちろん絢音は竜二とその後とんでもない
  係わり合い方をするとは、この時知る由もなかった。


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