幸せの欠片
第14章 幸せの時間
食事の後は、どこにも寄らずにアパートまで送ってくれた
時間的にはまだ早いなとは思ったけれど
「離れたくなくなるし、明後日また会えるから」
そう言われ、頷いた俺が車のドアを開けようとした瞬間、グッと腕を引かれた
え、と思う間もなく重なった唇に、一瞬息が止まる
不意討ちのキスはすぐに離された
「愛してる」
至極真面目な顔をしてそう囁いた相葉さんに
食事の時とは逆に
今度は俺の方が真っ赤になってしまう番だった
またね、と走り出す車を見送る俺の顔は、きっと酷く歪んでいると思う
相葉さんにそれを見られないのは幸いだった
俺だって、相葉さんを「愛してる」
だけどこれ以上、深みに嵌まるのは怖い
失った時、自分を保てる自信がない
なのに
もっと相葉さんを知りたい
相葉さんを愛したいし愛されたいなんて心が叫んでいる
俺はどうしたらいいんだろう
「…っ」
ズキン、と内側からの痛みに胸を抑えた
ー…分かってるって
俺に永遠の幸せなんか来ない事は