幸せの欠片
第17章 傍にいて
出ないんじゃない
出せなかった
名前を口にしようとした途端、信じられない位の羞恥が襲ってきたからだ
何で?
たかが名前なのに、こんなにも特別に感じてしまう意味が分からない
「言え…ない」
自分でも真っ赤になってるのが分かる
小さく首を振って、拒否の意を伝えた
「言って」
だけど相葉さんも引こうとはしない
動くのもピタリと止めてしまい、失った刺激に中が抗議するかのように収縮して、ひゅっと喉を詰まらせた
「うご、いて…っ」
中途半端が辛い
強請るように腰を揺らすけど、相葉さんは見つめたまま動いてはくれない
「呼んで…、かず」
「相葉、さん…っ」
「そうじゃない」
言われなくても、相葉さんは言わない限り動かないのだと悟った
自分だってキツいくせに、それを我慢してまで俺に求めてくる
たった3文字の組み合わせ
なのに言えないのは何故だろう
だけど
言えたら何かが変わる気がする
これまで以上の何かを、手に入れられる気がする