幸せの欠片
第6章 戸惑いと優しさ
疲れた
まだまだ山道は終わりそうにない
思ったより上まで上がってた事に、今さらながら気付かされた
休憩はおろか、少し座れそうな処もない
ガードレールに寄りかかるにも、狭いこの道では邪魔になるだろうし
それこそ更に好奇の視線に晒される
何か言われる訳じゃないけど、今の俺には耐えられそうにない
疲れた足を引きずって、ひたすら下に向かって歩くしかない
何台かの車が俺の横を通り越した時、その中に相葉さんの車も見つけた
横を素通りされた瞬間
何かがストンと俺の中に落ちた
ー…終わった
そう、確信した
スマホを取り出し、電話帳から相葉さんの名前を辿る
そしてその名前が表示されたページを開いた俺は
“ごめんなさい“
そう心で呟いてから、《削除しますか?》をタップして
相葉さんの存在をそこから消した
これでもう、自分からは連絡出来ない
相葉さんからは来る事もないだろう
彼女の時と同じ
終わりは簡単に訪れる