幸せの欠片
第12章 その先へ
飲み込み切れない唾液が、口の端から零れ落ちる
その滴を、唇を離れた相葉さんが舐め取った
「駄目だ、これ以上は止まれなくなる」
そう言って身体を離そうとした相葉さんの、首に回していた手に力を込める
「…止まんなくて、いい」
少し身体を起こして、相葉さんの目を見つめた
ゆらゆら揺れて見えるのは、さっきのキスで涙が浮かんでいるから
それでも、相葉さんの瞳が欲を携えているのが分かる
「…抱いてよ、俺を……」
「かず…」
相葉さんの肌を感じたい
指で、舌で、俺の身体に触れて欲しいし
俺も相葉さんに触れたい
「…いいの?」
「嫌なら、こんな事言わない」
少し声が震えてるのを、俺は上手く隠せてるだろうか
誘っておいて、怖くないと言えば嘘になる
だけど今日は
今日こそは
ー…抱かれたいと、思ったんだ
「優しく、する」
「うん」
「…辛かったら、言えよ」
相葉さんが目尻に溜まった涙を軽く吸った
「大丈夫だよ」
だから俺を
ー…今だけでもいいから、愛して