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第20章 まんてん
#A
A「…はぁ。 」
今日の初戦は散々だった。
スタメンに選ばれたことで、空回りして
周りが見えず、先輩方に迷惑かけまくり。
格下相手にボコスカにシュートを打たれ、
あえなく途中交代させられた。
その後交代メンバーが盛り返してくれて
初戦突破はしたものの
情けなさと、申し訳なさと、
なにより悔しさで頭ん中はグチャグチャだ。
試合会場から寮に戻るバスの中、
"明日もスタメンの変更はなし"と言った
監督の言葉の意味を考えていた。
ぼんやりと、流れていく窓の外の景色を眺めていると
ポケットのスマホが震えた。
A「うわぁー…キレイ… 」
にのちゃんから送られてきたメッセージには
大きく夜空に輝く色とりどりの花火の写メ。
それと、俺が見たがってたおーちゃんの絵。
額縁に飾られた絵のガラス面に、
スマホを構えるにのちゃんと
それに寄り添うおーちゃんが反射してる。
シルエットだけのそれが、
どことなく楽しそうに見える。
M「すげー。めっちゃキレイ。 」
隣から俺のスマホを覗き込む潤がそう呟いて、
ようやくみるべきところの違いに気づいた。
A「……やっぱ出たかったなー、文化祭。」
屋上から見下ろしたであろう街の風景。
家々の並ぶあたりには、
色とりどりの魚が描かれている。
M「じゃあ代わりに俺が大会出てやろうか? 」
A「ちがっ…、ごめん。そういうつもりじゃ… 」
M「わーってるよ。でも明日も同じことしたら
ほんとに俺がでるかんな?」
違うポジションだけどな!と笑う潤に
グッと込み上げるものを感じたが
なんとか溢れる前に堪えた。
ふっと潤から顔を背けると、またもスマホが震え、
にのちゃんから届いたメッセージ。
[明後日、風間と応援いくからね。
明日も絶対勝てよ!]
すぐに続けて届いた"fight!"と踊る猫のスタンプ。
A「…ふふっ 」
猫娘からの猫スタンプ。
了解っ!とこちらからも返信を返すと
シートに深く座り直し、
よしっ、と気合いを入れ直した。
