うちの社長が酷すぎる!
第7章 環境の変化
まだ慣れてない会社のフロアを歩く。
ヒールだけど地面に敷かれた赤い絨毯のおかげで音がならず、会社の中は意外と静か。
受付に行くと、女の人が「提示お願いします」と笑顔を向けてきた。
「あ、はい……っと、これですよね?」
「はい、こちらです。確かに拝見しました」
受付嬢はにっこり笑って「頑張ってくださいね」と言った。
うぅ……美人さんだから気圧される……
「あ、はぃ………」
そそくさとその場を離れ、エレベータに乗り込む。誰も乗ってくる気配が無くて、ボタンを押そうとした。
「っあ、すみません入ります」
焦ったような声と共に人影がエレベーターに乗り込んできて、慌ててボタンから指を離した。
「…あ、稀乃?おまえも、今から出勤?」
「誠也!うん、まぁ」
飛び込んできた人影は希崎誠也…元カレ。既婚者だけど。左手の薬指には指輪が光っていた。