幸せの欠片 *超* 番外編
第1章 プロローグ
今日は酔いたい気分だった
普段は飲みに出ても、ほろ酔い程度で我を忘れるなんて絶対にしないのに
頭の中がぐるぐる回って、前後不覚
歩きたくても平衡感覚を失ってフラフラ
何だか怒ってる声が聞こえるけど、まともに耳になんか入ってこない
「ほら!ちゃんと帰れよ!!……すいません、お願いします」
良く分からないまま、半ば無理矢理車に押し込められた
…多分、タクシー?
あれ、俺住所言ったっけ?
ああ、財布出さなきゃ
お金あったかなぁ……タクシー代くらいは残ってたと思うけど
静かな車の揺れと、程好い固さのシートが心地良くて何も考えられない
…目を閉じた俺はあっという間に眠りの世界に吸い込まれて行った
*****
「お客さん!着きましたよ」
呆れたような声に目が覚めた
短時間でも寝たからか、幾分頭はしっかりしてきているようだ
「あ、すいません!寝ちゃってて…」
慌てて窓の外を見ると、そこは自分のアパートの前で
メーターの料金を確認して、鞄から財布を出した
「かなり酔ってるみたいだけど、歩ける?」
お金を受け取りながら、運転手さんが今度は心配そうに俺を見つめた