眠れない夜を抱いて
第3章 友達じゃなくて
にのと大野さんの間には、独特な空気があるみたいだ
口では “友達“ と言ってるけれど、何か違う気がする
恋愛感情ではなくて
“友達“ でもなくて
だけど家族とも違って
何て言えばいいんだろうか、絶対的な信頼感…?
「なんか、いいね」
気が付いたら、そう口に出していた
「え、なにが?」
にのが不思議そうな顔をする
「にのと、大野さん」
「そうなの?」
…ああ、そうか
二人にしたら、これが普通すぎて分からないんだ
「うん。なんて言っていいか分からないけど、雰囲気が」
「ふふ」
ほんのりと染まった顔で笑うにのに、ヤバいくらいに心臓が高鳴った
欲しい
にのを、自分のものにしたい
自分だけを見て欲しい
突然胸に沸いた、怖いくらいの独占欲に自分でも少し動揺した
「悪い。酔ったみたいだから帰るよ」
冷静さを取り戻したくて、取ってつけた言い訳をして席を立つ
「また、連絡するね」
いきなりの俺の変化に戸惑うにのを見ないように、余るくらいの金額をカウンターに置いて、逃げるように店を後にした