Hello
第6章 ぬくもり * にのあい
Aiba
季節外れともいえる蒸し暑さから一転。
昼過ぎから、しとしとと振りだした雨とともに、本来の秋の空気が戻ってきた。
家のなかに一人でいると、ヒーターをつけるほどじゃないが、どうにも、うすら寒い。
クッションをつみあげたソファに背中をあずけ、膝にブランケットをかけて、台本を読むことにする。
いい加減夜も更け、三杯目のコーヒーをいれ直そうかと思った頃、待ち人が到着した。
「遅かったね」
ピンポンとなった扉をあけてみたら、キャップを深くかぶった恋人が、あきれるほどの薄着で立っていた。
思わず、お帰りと、言うより先に、ツッコンでしまった。
「……知ってる?今日は、昨日より五度低いんだってさ」
「ふうん……」
お邪魔します、ともいわず、勝手知ったるといった感じで、にのは、スタスタと家に入ってきた。
「……おまえ、寒くないの?」
「寒いよ」
「上着は?」
「もってきてない」
俺は、トレーナー生地のスエットの上下姿だ。
対するにのは、よれよれのいつものTシャツに、ハーフパンツ姿。
ファンの子がみたらひくぞ?
思わず白い細い腕を後ろからつかんだら、驚くほど冷たくてびっくりした。
「……おまえ、冷えきってんじゃん」
「寒いもん」
言い返すにのは、薄く笑ってる。
いや、笑いごとじゃねーだろ!
「とりあえず、風呂はいろ、風呂」
バタバタと、バスタオルをとりにいこうと身を翻しかけたら、
「腹へった」
と、これまた珍しいことをいう。
こんな時間にあんまりものを食べたがらないやつなのにな。
「食ってないの?」
「相葉さんが作ったご飯がよかったから、食ってない」
なんて。
可愛い答えがかえってきた。
どうしたの?
声に出さぬまま、俺は、目の前に佇む、にのをそっと抱き寄せた。
自分の温もりを分けてあげれるように、ぎゅっと力をこめると、にのも俺の背中に腕をまわしてきた。
「……あったかい」
「でしょ?おまえ冷たすぎんだよ」
にのが、ぎゅっとしがみついてきた、
なんだろ。
今日は、やけに甘えん坊だな。
薄い背中を擦りながら、頬と頬をくっつけた。
冷たい頬は、ぷにっと柔らかい。
「くすぐった…」
クスクス笑うにのの唇をそっとふさいだ。
よーし。あっためてあげる。
覚悟しな?
20171012