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Hello

第20章 むつまじく * にのあい

Kazu

「ね。美味しいでしょ?」

「……ん」

「やっぱり?リーダーと俺が、超ハマったもん!」

相葉さんが、嬉しそうにフォークを口に運んだ。

……いや、確かに美味いけど、体の血が、全部砂糖水になりそうなくらい甘いわ、これ。

俺は、黙ってブラックコーヒーをすすった。


ご丁寧に、バレンタインだからといって、チョコケーキを買ってきた相葉さん。
この時期のスイーツ店に、よくぞ入っていったものだ、と思ってたら、マネージャーくんに入らせたって。

……大変だな、あいつも。

相葉さんの、ちょっとぬけてるお人好しなマネージャーを思い出す。

ラグに胡座をかいてる俺の横で、ケーキを完食した相葉さんは、ごろんと横になった。
お腹をさすり、幸せそうに笑ってる。

「はーしあわせ」

「……そりゃ良かった」

「ここのケーキ最高」
 
「そーか」

「にのちゃんも最高」

「………?」

怪訝な視線をおくれば、なんだか熱っぽい色の目をした相葉さんが、俺をみつめてた。

……なんのスイッチよ。

相変わらず前触れのない口説き文句。

じっと黙っていたら、相葉さんは、はい、と手を広げた。

「おいで」

どきりと心臓が飛び出そうになった。

相葉さんは、にっこり微笑んでるけど。
 
「……無理」

やだよ。俺が飛びつくとでも?

「ほら」

ひらひら両手をふって、こちらを見上げる相葉さんに、ドキドキがとまらない。

「無理」

可愛い彼女なら、その胸に飛び込むんだろーが、あいにく俺は…

「耳真っ赤にして、何シカトしてんの」
 
突然相葉さんの馬鹿力が俺の腕を引っ張り、俺はコロンと相葉さんの胸に抱き込まれた。

「……ばかっ」

何すんだ、と身を捩らせたら。

「好き」

耳元で低く囁かれた。

「……」

脳ミソ直撃。

「にの」

「……」

「にのちゃん」

「……うるさいよ」

「真っ赤だよ」

「うるさい」

「可愛い❤」

言って、甘い唇が俺のそれと重なった。

「……」

俺は、あきらめてふっと体の力をぬいた。

仕方がない。こんな展開に持ち込まれたら、相葉さんの方が一枚も二枚も上手なんだ。
おとなしく相葉さんの口づけに酔っていたら。

「…甘いね」

囁かれて。

お前のケーキのせいだ、とばかりに俺は相葉さんの舌に、ゆっくり舌を絡めなおしたのだった。



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