Hello
第23章 卒業 * にのあい
Aiba
季節外れとも言える寒さのなか、俺は、無事高校卒業の日をむかえた。
校庭には写真をとるためにあちこちに輪ができていて。
そろいのコサージュをつけた卒業生と、在校生がこちゃまぜでごった返してた。
俺も、いろんな輪に呼ばれては顔をだし、やつらの記録に足跡を残してた。
「うぉい、相葉ー、三組のやつらが呼んでたぞ」
「ああ、今いく」
返事を返して振り向いたとき。
ふと。
さっきからずっと探していた人物を、ようやく捉えた。
そいつは人の輪の外にぽつりと佇み、俺をじっと見つめていた。
痛いくらい真っ直ぐな眼差し。
その視線から伝わる思いは、真剣で。
……真剣すぎて、俺は目をそらし続けたんだ。
ある日偶然知ったおまえの思いに。
常識とか、なんかいろいろ……考えちゃって。
答えはなかなかでなくて。
少し、考えさせて、と。
…ずっと、保留し続けた俺はズルい。
でもね。
俺は、ゆっくりと歩み寄る。
「…二宮」
「相葉先輩…卒業おめでとうございます」
「…ありがと」
茶色の瞳をゆらし緩く笑った彼に、俺も、にこりと微笑んだ。
泣くまい、と頑張ってるおまえの瞳に、今日こそ伝える、と決めてきたんだよ。実は。
ごめんな。
待たせて。
実は、すごくシンプルで簡単なことだったことにやっと気づいた。
おまえがどうとか、まわりがどうとかじゃなくてさ。
俺が、どうしたいか、だった。
…そしたら答えはおのずとハッキリしたんだよ。
黙ってる俺に、不安そうに二宮が首をかしげた。
「あの……相葉先輩?」
「二宮」
「……はい」
俺は少し息を吸い、じっとその顔をみつめて、言った。
「……俺と。つきあってくれる?」
「は……え?」
二宮の固まった顔に、一気に、俺の緊張がほどけた。
俺は、くすりと笑って、二宮にまた一歩近づいた。
「もう遅い?」
二宮の瞳の水分が増えた。
俺は苦笑する。
「……泣かないで。抱きしめたくなる」
「……」
「俺もね、おまえが好き」
二宮の瞳からぽろぽろと涙が落ちた。
「相葉ー!」
遠くから俺を呼ぶ声に、慌てて、今いく!と、返事をして、俺は二宮の頭に手をおいた。
「…あとで、電話するから」
二宮は、泣き笑いで頷いた。
「…待ってます」
……その笑顔は、とても綺麗だった。
End