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Hello

第24章 卒業 * じいまご

Jun


母校の前を通りがかると、校庭は、たくさんの人であふれかえっていた。

卒業証書らしき、お揃いのファイルを持って、ポーズをしている生徒たち。
みんな笑顔と涙でいい顔をしている。

「……懐かしいな」

呟いたら、隣をのんびり歩いてた智が、そうだな、と微笑んだ。
そして遠い記憶を呼び起こすように、優しい目を少し細めた。

「この日だったな。おまえが俺にコクってきたの」

「うん。もう智に会えるのは最後だと思ったから、当たって砕けろのつもりだった」

「ふふ…そっか」

智は、楽しそうに笑った。


当たって砕けろのつもりで、やった俺の一世一代の大告白は、

「ん。いーよ。つきあう?」

と、実にあっさりした一言で、実を結び。

現在にいたる。



「智さあ……ずっと気になってたんだけど、あのとき俺の存在、知ってた?」

「ん?なんで」

「だって、そんなふたつ返事でオッケーする?普通……」

「嫌だった?」

「そんなこと……!」

俺がふるふる首をふると、智は、その柔らかな笑顔で、じゃあいいじゃん、と、言った。

この浮世離れしたフワフワした感じに、いつも、……うん、と言いくるめられてる気がする。
惚れた弱味ってやつかな。

懐かしい思いのままその場を通り過ぎようとして。

ふと、校庭を見渡すことができるフェンス前で、立ち止まってしまった。

校庭のはしに、泣いてる男子学生と、卒業生らしき茶髪の男子学生。

茶髪の学生が、すごく優しい目をして、泣いてる男子学生の頭に手をおいてる。

その慈愛にも似た深い瞳の色に直感で感じた。

なんかさ…なんかさ。

「ねぇ…智。あの子達」

「ん。なんか、何年か前の俺たち見てるみたいだな」

智が、優しい声で頷いた。

ぽろぽろ涙をおとす背の低い学生くん。
見てれば分かる。
全身で、茶髪くんに、恋してるね。

「…あんときの潤も可愛かったなぁ」

智が、のんびりと呟いた。

「…なんだよ、急に」

「真っ赤な顔してさ…」

「いいよ。言わなくて!」

慌てて、遮る。

恋の成就を目的にしてたわけじゃなくて、けじめをつけようとした行動だったから、必死だったんだもの。

「……あの子達も俺たちみたく幸せになれたらいいね」

「なれんじゃね?」

ゆるく微笑んだ智に、笑いかえし、おれたちは、ゆっくり歩きだした。

End

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