Hello
第33章 ゆるり * 末ズ
Jun
静かに上下する薄い肩にそっと触れた。
ライブの打ち合わせが大詰めで、自宅に帰れたのは、既に深夜2時をまわっていて。
先に寝ててもいいよって言ったけど、それでもにののことだから、ゲームしながら、起きてるかなって、思っていた。
……ゲームしながら、寝ろって誰が言った?
コントローラーを持ったまま、行きだおれるようにラグの上で、すうすう寝ているにの。
一応頑張って起きてようと思ってくれてたんだろうな。
少し口をあけて、無垢な顔で眠っているにのの頬に手のひらを這わす。
一緒に暮らすようになっても、それぞれの仕事のペースがあるから、二人でゆっくり過ごせる時間は、意外に少ない。
でも、こうやって寝顔だけでも見れると…一日の疲れなんか吹っ飛んでしまう。
風呂あがりに着ている、くたくたのTシャツのすきまから、見える白い肌。
その滑らかな肌を見るだけで、付き合いはじめのようにいまだにドキドキしたりして…
つい頬にあてた手のひらを動かしてしまい、
「……ん…」
小さく声をあげて、閉じられた目がうっすら開いた。
薄い茶色をした瞳。
この潤んだ瞳に、俺は弱い。
「…ぁれ。…お帰り」
寝転んだまま、ふわっと笑って目を擦る仕草に、俺は笑って「ただいま」といった。
「ごめん…寝てた」
「かまわねぇよ。でも、ベッドで寝てくれ。腰痛めるぞ」
その細っこい腕をつかみ、ゆっくり起き上がらせた。
「うん…」
と、言って、無言で両手が差し出される。
抱き上げて、という意思表示に、くすりと笑い、その華奢な体を腕のなかにおさめ、「よっ」と勢いをつけ抱き上げた。
軽い体をぎゅうっと抱き締めると、その白い腕が俺の首にまきつけられて。
にのの香りが、ふわりと俺を包み、俺は彼の耳元にキスをおとした。
「…はやく風呂入ってきて」
小さく発せられた言葉は、珍しいにのからのお誘い。
「…腰は?」
「大丈夫」
「んじゃ、秒で入ってくる」
「…絶対な」
チュッ…と口づけをかわし、微笑みあって、俺はにのを寝室に運んだ。
壊れ物を扱うように彼をベッドに横たえる。
そのまま覆い被さりたくなる衝動を、全力で我慢して、くすくす笑うにのの声を背に、風呂に飛び込んだ。
愛したい。愛されたい。
にの。
愛してる。
20181014