Hello
第35章 大野さんと僕ら
×jun
ライブの打ち合わせが煮詰まってきて、気分転換に外の空気を吸いたくなった。
近くにいたスタッフに声をかけて、部屋からでる。
「……っ……体、バッキバキ……」
ストレッチをしながら、階段をおりて、あえて別の階に向かった。
最高のパフォーマンスを見せるためなら、と、寝る間も惜しんで、様々なことを考え続けているから、脳みそが、パンク寸前だ。
それでも、ありがたいことに、仕事はコンスタントにあるわけだから、それをこなしながらになるわけで。
どれも手を抜けないし、抜きたくもない。
イライラする気持ちを隠しながら、テンションをあげて収録にのぞみ。
頭痛のある頭をおさえながら、何着も服を着替えて笑顔で撮影にのぞみ。
俺……何やってんだろ、と、……らしくもなく、自分のなかで、気持ちのバランスがとりきれなくなることもしばしばだ。
やることが多すぎて、1日24時間なんて少なすぎて……結果、削れるのは、睡眠時間。
下手すれば、食事もいい加減なものになる、俺が一年で一番不健康になる時期であった。
寝不足でふわふわする頭を抱えて、ペタペタ歩いて行き着いた廊下の突き当たり。
片側のベンチに、重たい体をドサリと投げ捨て、壁によりかかって座った。
壁に頬をくっつけたら、冷たくて気持ちよくて。
少しだけ……と、目を閉じたら、あっという間に意識をおとしてしまった。
「…………」
唐突に、意識が戻る。
あれ。
景色がおかしくて、何度か瞬きを繰り返した。
壁によりかかっていた体は、横たえられていて、なんだか温かいものに頭がのせられていて……
「あ。起きた」
ふにゃり、笑う人が真上から見下ろしていた。
その近さに、ぎょっとして。
瞬時に自分がどういう体勢をとっているのか、理解した。
…………膝枕。
はずいだろ!
慌てて起き上がろうとしたら、馬鹿力で、制される。
リーダーは、何気に力が強い。
多分本気を出したら、かなわないかも……。
そんな人物が、俺の肩を押さえ込むものだから、しばらくじたばたしていた俺は、あきらめて体の力を抜いて、ため息をついた。
「え…なにしてんの?」
「膝枕」
「……いやいや、いーから。この手をどけて」
「よくない。もちっと寝とけ」
「え、意味わかんね、ちょっと…」
「オーバーワークだ、松潤」