心の隙間に…「君を好きにならない」スピンオフ
第1章 出会い
《BAR slow》
向井さんが
真琴さんと帰った翌日
俺はslowに来ていた
理由は
一人になりたくない
それだけ。
相手が誰でもいい
向井さんに初めて会った
あの日のように
怖い思いを
またしてもいい
そう思うほど
あの部屋で一人で になるのが
嫌だったんだ。
「どしたの?マサシ」
「………」
「喋る気もしない?」
「…ほっといて下さい」
「ほっとけないわよ。
だって
本当にほっといて欲しかったら
カウンターに座らないもの」
返す言葉がなかった
オネェの言う通りだ
でも
向井さんのことを
あれこれ
聞かれるのも嫌だった
また
泣いてしまいそうだから
「ねぇ、マサシ」
「…はい」
「ちょっと話し相手に
なってあげてほしい子が
いるんだけど」
「え?」
「あの奥に座ってる
革ジャンの子がいるでしょ?
あの子、失恋したばっかりで
落ち込んでて…
あ、あの子は
すぐ近くのチェンジってバーの
バイト君なんだけどね
すごくいい子なんだけど
悪い男に騙されちゃってね…
だから
マサシみたいに
ちゃんとした大人に
話聞いてあげて欲しいのよ。
まだ大学生で苦労人でね
就職のことも
色々悩んでるみたいなのよね…
どう?
お願いできる?」