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好きにさせて

第2章 二人



夜勤明けの日曜日
俺はまた
小夜のドアを開けた


「いらっしゃい」


いつものように
シャツを着た茜が
笑顔で俺を見つめると

あぁ
来て良かったなぁと思う


今日の
茜のシャツの色は白

そういえば3ヶ月
茜と何度も会ってるけど
シャツ以外の服を見たことがない

密かに
そんなことを考えながら
カウンター席に座ると
突然
茜がエプロンを外した


「どないした?」


「今日
もうお店閉めちゃおっかなー」


な、なんやて!?

おぅ!
閉めてまえ!

そしたら
茜と二人きりや!


茜の意味深な物言いに
俺は
わずかな期待をしながら
言葉を探した


「どうせ日曜日はいっつも
俺の貸切やしなぁ(笑)」


すると茜は

「せやね」

と、関西弁のマネをして
ニコッと笑い
外の看板のライトを消した


よっしゃ


俺は
思わず心の中で
そう呟いている自分に
驚いた


少なからず
子供の時
淡い恋心を抱いてた茜に
気がないわけじゃない

今、付き合うてる女もおらん俺には
なかなかの相手やし

正直
気がなかったら
こんなにここへは
通ったりせぇへん

そうは思ってても

よっしゃ

と言うほど
茜を気に入ってんのやなぁと
今更ながら
自覚していた


そんな俺は
この先の展開を気にしながらも
それを茜に悟られんよう
平然としていると

「隣、座っていい?」

と、言いながら
茜は俺の隣に腰を下ろした


「もう座ってるやんけ」


「うん(笑)」


ん?


顔は笑ってるけど
何かあったのか
今日の茜は元気がない

しゃべる時笑顔ではあるけど
笑顔と笑顔の合間の表情が
疲れてるみたいや


けど
その雰囲気に
俺はなぜか
懐かしさを感じていた


「私も飲んでいい?」


「もちろんや。
てゆーか藤沢酒飲めるんか?」


茜が
店で酒を飲んでるところを
一度も見たことがなかった俺は
勝手に酒が弱いと
思い込んでいた


「飲めるよ」


「なんや。はよ言え」


「ごめん」


「いや、かまへんけど」


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