好きにさせて
第2章 二人
お互いのグラスに
ビールを注ぎ合い
小さく乾杯をすると
茜はビールを半分程飲んで
テーブルにグラスを置いた
「強いんか?酒」
「強くはないけど
弱くもないかな」
「店やってる時は
飲まへんのか?」
「うん」
「ほな…藤沢と飲みたなったら
閉店後やないとあかんのやなぁ」
「そうね」
「なんか…あったんか?
元気ないなぁ」
そう言うと
茜はちょっと苦笑いを浮かべて
うつむいた
それから茜は
何かあったとも
話聞いて
とも言わないまま
静かに数分の時が流れた
何も話すつもりはないらしいな
ただただ
黙ってグラスを見つめる
そんな茜を見て
俺は
あることに気づいた
せや
これや
茜と再会して
ずっと違和感あったんは
これやったんや
ちょっと暗い表情の茜を見たのは
再会して今日が初めて
その
なんとも言えない横顔は
あの頃のまま
茜は明るいし
ちょっと姉御肌のところもあった
せやけどたまにドジることもあったりして
とにかく感じのええ女の子やったけど
時々
こんな風に
なんとも言えない顔を
してる時があった
それが俺には
妙に魅力的で
大人っぽく感じてたんや
いつも
能天気に笑ってるだけやない
なんや心配してしまう
孤独感を感じさせる
そんな茜が
俺は好きやったんや