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好きにさせて

第12章 嘘



茜に酌をしてやり
二人で小さく乾杯すると
なんや昔に戻ったみたいで

俺は
心の中で
平田に感謝していた


茜と顔を合わすことは
ないかもしれへんと
思うてたからや


もちろん
顔を見れば
色んなことを思い出して
悔しい気持ちも湧いて来るけど

俺はまだ
やっぱり茜が好きで

茜と
他愛もない話を
酒でも飲みながらできるなら
それはそれで

嬉しかった


「茜」


「なに?」


「痩せたんちゃうか?」


「そ、そうかな…」


「それに
具合でも悪いんか?
疲れてるみたいやで」


「そんなことないよ。
元気だし、疲れてなんかないし」


笑ってみせる茜の顔は
おかしくなるほど
わざとらしくて
俺はつい
笑ってしまった


「あはは(笑)なんやそれ
茜は嘘が下手やなぁ」


「え?」


「隣、座れや。
立ってたらしんどいやろ?
ほかに客もおらんし」

せめて座ってくれ
長居はせえへんから

「あ…ありがと」

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