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好きにさせて

第12章 嘘


タクシーが来て
茜を乗せ
運転手に
行き先を告げると

「散らかってる思うけど
許してな」

そう言って俺は
タクシーから
身体を放した


バンッ


タクシーのドアが閉まり
ちょっと不安げな茜に
手を振ると
タクシーは走り出し

そして

すぐに止まって
また
ドアが開いた


あいつ…


茜が
やっぱり行かない
と言って
タクシーから降りて来ると思った俺は
急いでドアのところまで走り
タクシーの中を覗き込むと

茜は
奥に座っていて

「尚も一緒に来てくれる?」

と、呟いた


「ええんか?」

「うん」

「ほな…部屋まで行くわ」

正直
このままほんとに
俺の部屋に
行ってくれるのかどうか
不安やった俺は
ホッとしていた

タクシーの中では
お互いなんとなく
何も話さず
妙な雰囲気のまま
アパートに着くと

とりあえず
二人ともタクシーから降りて
顔を見合わせたた


「腹減ってないか?
うち、なんもないで」

「じゃあ
ちょっとコンビニ寄ってもいい?」

「かまへんで。
歯ブラシ買うか?(笑)」

「(笑)そうだね」


ちょっと
まだ遠慮してる茜が
少し笑顔を見せてくれて
またホッとして
歯ブラシを買う茜を見て
本当に
泊まってくれるんやと
ホッとする

ほんまにもう
心配で心配で
仕方がないんや


買い物が終わって
俺の部屋まで一緒に歩き

それから鍵を開けて
茜を中に入らせると

俺は
中に入らないまま

「ほな、出かけて来るわ」

と、茜に声をかけた


けど
茜は無言で
俺を見つめたまま


「どした?」


「尚」


「なんや」


「我儘言ってもいい?」


「珍しいな!
かまへんで」


「行かないで
一緒に入って」


そう言うと
茜は
俺の袖を引っ張った

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