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好きにさせて

第12章 嘘


俺は自分で言うときながら
「つわり」というフレーズに
心臓が飛び出しそうになった


痩せてて
疲れた顔

突然の別れ


いや、ま、まさか
俺はちゃんと
やってたつもり…やけど…


「それは…ないから」


茜は
苦笑いを浮かべて
うつむき
食べかけの弁当を
袋にしまい始めた


微妙な返しや
と思った


茜の性格なら
違うなら違うと
もっと否定して
俺を安心させるはず


もしかして…新しい男の?


いやいや
それは早すぎや
温泉行ってから
二週間とちょっとしか
経ってない


いや待てよ

俺と関係してる間に
もう他の男と寝てたとしたら…


茜に限って
そんなことは
ない思うけど


「尚」


「な、なんや」


「髪、乾かしてくるね」


「あ、あぁ…い、いや
茜、ちょっと…ええか?」


「ん?」


俺は茜の隣に
少し距離を置いて座り
茜の顔を覗き込んだ


「ほんまに妊娠してないんか?」


「うん、してないよ。
心配してくれて
ありがと。
でも本当に、それはないから」


俺以外の男のことは
…さすがに
聞かれへんかった


「ほななんで
そないに痩せてもうてるんや…」


「(苦笑)ん〜…」


茜は
ふんわりとした返事で
そのことを誤魔化すと
小さなくしゃみをした


「あーあかん
早う髪乾かさな。
風邪ひくよな」


「あ…うん」


結局
理由はわからないまま
茜は髪を乾かし始め


俺は
茜の残した弁当の重さに
驚いていた

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