好きにさせて
第13章 不通
「尚…尚…」
「…ん?…何時や?」
翌朝
耳元で囁く茜の声で
俺は目が覚めた
「8時」
「ほんま?」
昼間
あんなに寝たのに
8時まで寝てたんか…
「うん。
私もびっくりしちゃった」
そんなことを言う茜が見たくて
薄眼を開け
少し照れて笑う茜の顔がみえると
俺は
茜を抱きしめて
柔らかな髪に
頰をすり寄せた
あぁ…
ほんまに気持ちえぇ
なんでこんなに
女の身体は
柔らかいんや
「よく寝てたね」
「せやな…
俺も茜がおらんなって
寝られへん日が
多かったからかも
しれんなぁ…
なぁ茜
あっち向いてくれるか」
「うん」
茜に背中を向けさせ
俺は
その背中にぴったりと
腹をつけて
茜に抱きついた
「あったかい…」
茜は
気持ち良さそうな声で
そう囁き
「ん…柔らかい」
俺は
そう言いながら
茜の胸を
手の平で
すっぽりと包んだ
「尚…」
「ごめんな」
「ううん」
「あれから
やってないから
起きたら勃ってたわ(笑)
ちょっと待っとってな
そのうちおさまるから」
「うん」
どういう理由で
子供を産まれへんのか
それを聞くまでは
入れるわけにはいかん
今まで
何も知らずに
セックスしてたことさえ
俺は
後ろめたさを感じていた
身体の痛みや
心の痛みが
茜に無かったかどうか
それが一番気にかかる
「尚…」
「ん?」
「そっち向いてもいい?」
「ええよ」
茜は
もぞもぞと俺の方を向いて
俺の腕の中に
もぐりこみ
甘えるように
頰をすり寄せて呟いた
「私ね
今は病気じゃないから」
「ん?」
「病気になって
子宮無くなったけど
今は病気じゃないの。
だから
そーゆーの
気にしなくてもいいから」
「そ、そぉか。
病気やないなら
安心したわ」
茜には
俺の心の中が
透け透けなんやろうか
いや、もしかしたら
それは茜が
一番俺に伝えたかったこと
なんかもしれへん
子宮が無いということを
「がっかりした?」
「なんでや?」