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好きにさせて

第13章 不通



「それから…」


「なんや?」


「私、どこも痛く無いし
手術する前と何も変わらないの。
だから…
気を使ったり
しないで欲しい」


「気を…つかう?」


「痛くないか?とか
大丈夫か?…とか」


「そぉか。
うん、わかった」


「私は…」


「うん」


「普通だから」


その言葉を聞いて
俺はぐっと胸が熱くなった

茜が
そんなことを言うということは
そうされたことで
嫌な思いをしたからに
違いない

ほんまに…
色々大変やったんやろう


せやけど
「大丈夫か?」とか
「痛ないか?」とか
危うく俺も言うてしまいそうな
フレーズで
正直ちょっと焦った


「うんうん、わかったで。
そうやって
なんでも言うてくれると
ほんま嬉しいし
茜の気持ちが
よう分かって助かるわ。
せやから遠慮せんと
なんでも話してな」


「…うん」


俺の胸の中で
頷く茜は

何を考えてるんやろう


これで良かったのかな
こんなことして
いいのかな
うまくいくのかな…

きっとそんな感じで
不安がいっぱいなんやろう

俺と付き合うことになっても
まだ
一度も屈託のない笑顔を
見せてないのが
何よりの証拠やった


そんな茜に
優しくしてやりたい

茜を
守ってやりたい

その気持ちが
裏目にでんようにせんと…
と、俺は心の中で思いながら
茜の顔を覗き込んだ


「なぁ茜」


「ん?」


「腹減ってないか?」


「ん〜…」


けどまぁとりあえず
茜の食欲を
戻してやらんと


「俺はぺこぺこやねんけど」


冗談交じりに言った
その言葉で
やっと顔を上げた茜の目が
少し潤んでいて…驚いた


「じゃあ、何か作るね」


しっかりと
落ち着いて話してると
思うてたけど
ほんまは
気丈に振舞ってたんか…

そんな茜の顔を見たら

俺はつい


「んっ…なお…」


なんかこっちも
胸がいっぱいになって
俺は半ば無理やり
茜に舌を絡ませていた

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