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好きにさせて

第2章 二人

「あーなんだか落ち着くなぁ…」

しばらくして

茜は伸びをしながら
そんな事を言い出した


「そぉか?」


「うん。
野崎くんの関西弁聞いてると
なんて言うか…

自分に戻れる感じする」


自分に…戻れる?


「よう…分からへんけど
それはえぇことなんよな?」


「うん」


「ほな良かった。
相変わらず
言うてること
分からんとこあんなぁ(笑)」


「え?」


「しっかりしてんのに
ちょーっと天然なとこあって
返事がふんわりしてて
昔から人の話
聞いてんのか
聞いてないのか
よう分からん時あったもんな」


「そ、そうなの?」


「あぁ、そーやった。
今も変わってへんなぁ。
変わってへんから
俺もなんや落ち着くわ」


「それは…いいこと?
私らしいってこと?」


「あぁ、えぇことやし
お前らしい。
藤沢は
そのまんまがええわ」


そう言うと
茜は
柔らかく微笑んで

「ありがとう」

と、呟やき
また俺から視線を外して
考え事でもしているような
なんとも言えない顔をした



もうえぇ大人で
色々悩みもあるやろう


けど

自分に戻れるって
どう言う意味や

なんで
私らしい?なんて
俺に聞くねん



茜の

『自分に戻れる』

『私らしい』

という
その言葉の意味を知るのは
もっともっと
先のことだった

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