好きにさせて
第14章 結婚
飯が終わっても
俺達は
ベットがら降りず
ただ寄り添い
触れ合い
キスをして
何気ない言葉を交わす
座ったままだったり
寝転んだり
膝枕をしてもらったり
けど
セックスにつながるような
それ以上のことは
せえへんかった
理由は
分からへんけど
「なぁ、茜」
「ん?」
「今日は…」
「うん」
「泊まれるんか?」
「…………」
何気ない言葉
いつものセリフや
ただの確認
それやのに
茜は黙りこくり
首を横に振った
さっきまで
あない
楽しそうやったのに
茜の表情は
明らかに暗い
ほな
もう帰らんでええように
結婚しよか
そう
軽く言えたなら
どない楽やろう
そのプロポーズに
あっさりと首を縦に振り
笑顔で「うん!」と
茜が言えたなら
茜はどんなに楽やろう…
付き合うことは
OKしてくれたけど
結婚はそう簡単には
いかへんことくらい
俺も分かってる
せやから
俺も
茜も
そのことには
触れられず
まるで
そのことを忘れるために
思い切り甘い時間を
過ごしているようや
離れるのが怖い
茜のその言葉は
時間を追うごとに
実は俺にもズシリと
のしかかってきていた
別れたりしないという
契約を交わしたわけでもなく
俺達は
太く硬い鎖で
繋がっているわけでもない
だから
俺も茜も
不安で
まるで
揺れる小舟に
乗っているように
不安定なまま
「やっぱり別れる」
と、どちらかが
言うんやないかと
お互い怯えてる
せやから
離れるのが
怖いんや