好きにさせて
第14章 結婚
その週末
俺は平田に誘われ
小夜に行くことになった
茜と親密になってから
実は小夜には
あんまり顔を出していない
理由は…
まぁ色々
「遅かったじゃないかー
さ、座れ座れ」
「おう、久しぶりやなぁ」
「家族サービスが
忙しくてな。
独身が羨ましいよ」
「何言うてんねん。
顔に幸せゆーて書いてるで」
「何…飲む?」
カウンターの中から
茜が俺に声をかけた
呼び方を迷うたんやろう
茜は俺のことを
野崎とも尚とも呼ばへんかった
「ビールくれるか?」
「うん」
「せっかくやし
茜も乾杯だけ付き合えや」
「あ、う、うん」
茜がビールを取りに行くと
平田は俺の足を小突いて
小さな声を出した
「呼び捨てしてんじゃん」
あ…
まぁ…隠すこともないけど
「まぁ…な」
「おまたせ、どーぞ」
茜が来て
その話は一旦やめ
俺達は久しぶりに
乾杯をした
俺と茜は
まだモヤモヤしたものを
抱えてたけど
恋人のふりやのうて
普通の恋人になったことで
スッキリはしていた
これで
平田には
嘘つかんでええ
茜も
そう思うてるに
違いなかった