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好きにさせて

第4章 約束


ほんとは
喉なんか乾いてなかった

けど俺は
自動販売機の前に立ち
コーラのボタンを押した


「おごったろか?」


「ううん」


飲みたいわけではないけど
出てきたコーラの蓋をあけ
俺は仕方なく
ゴクゴクと喉をならしながら
空を見上げた

その空は
少し・・薄暗く

その暗さは
こらから冬が訪れて
受験が近付き

卒業という言葉が
身に染みることを
意味していた



「ちょっと飲むか?」


「・・・・」


藤沢は
驚いた顔をしたあと
戸惑った顔をみせた


「あ、せやな」


軽い気持ちで言うたけど
同じペットボトルに
口つけるんは

あかんねんな

俺は
藤沢の方へ差し出した
ペットボトルを戻して
また自分でコーラを
口に含んだ



「嫌じゃ・・なくて」


「ん?」


「嫌かな・・って」


「俺が?」


「うん」


「嫌やったら言わへんし」


ある意味
飲んで欲しかったし

そんで
その後また
俺が飲みたかったのに。


「そっか」


あかん…
つまらん時間稼ぎは
もう終わりそうや


藤沢とは
多分違う高校に行く

せやから
俺には

俺らには
そんなに時間はないのに。


「付き合うてたら
こんなこと普通にするんよな?」


「・・多分」


好きやとは
言えへんけど

このまま卒業するんは
嫌で

俺は
藤沢との距離を
どうにかしたかった


「なぁ」


「ん?」



「付き合うって
どんなんか……

やってみんか?」



「え?」



「た、たとえば
付き合うてるフリや。
なんちゅうかその…
恋人ごっこいうか…」



「お芝居みたいな?」



「せやそれ!
藤沢天才!」


藤沢の「お芝居」という言葉に
俺は鼻血がでそうなほど
興奮した

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