好きにさせて
第1章 メアド
茜に会うのは
何年ぶりかな…
待てよ
何年どころか
十年以上会ってないはず
俺は大学を卒業して
地元に就職したが
転勤ばかりで
ほとんど地元には住んでいない
確か茜を最後に見かけたのは
成人式の時で
その後風の便りで
結婚したって聞いたくらいだ
「お前、藤沢の母親とも
親しかったよな?」
「あぁ。
小学生の時なんか
茜の家によう遊びに行ってた」
「てかさ、お前また
関西弁に戻ってるな(笑)」
「せやろ(笑)
最後は大阪転勤やったから
もう完全に戻ってしもたんや」
「まぁその方が
お前らしいけどな。
小学校の時
みんなで野崎の関西弁マネしてたの
思い出すなぁ(笑)」
「あーそんな事もあったなぁ(笑)」
「あ、あそこの店」
友達の平田は
こじんまりとした
見覚えのある店を指差した
「わ~ほんまや
なんや懐かしいなぁ・・」
子供のころ
茜の母親の店は
怪しいくもいやらしくも思えて
俺は何度も店の前を
ウロウロした記憶がある
大人になってみると
その店は
キャバクラでもスナックでもなく
ややスナックっぽい
ちょっとした小料理屋で
俺は失笑してしまった
「クスッ(笑)
こんな店やったかなぁ」
「ん?」
「なんやもっと
やらしい店やて思てたわ(笑)」