好きにさせて
第5章 部屋
「でも、なんや?」
茜に酒を注ぎながら
その先を促すと
身体があったまったのか
茜は少しパーカーの
ファスナーを下げ
俺から視線を外したまま
話を続けた
あっ……鎖骨…
「友達の話なんだけど…」
「あ…うん」
「その友達は私と同じ歳で
まだ結婚していないんだけどね
知り合って間もない人と
その…
ホテルに行ってしまったんだって」
『セックス』とか
『やった』とかいう言葉を避ける茜は
もう37歳やのに
俺の隣で耳を赤くしていた
「それで?」
「その話を聞いた時
私ね…
ちょっと
羨ましいなって
思ったの。
ちょっと…
いいな~って。
だから
尚と同じ理由じゃ
ないかもしれないけど
そう思うことも
あるみたい」
そう言うと
茜は
頬に両手をのせて
顔を隠すような仕草をみせた
そんな茜をからかいたくて
俺が
茜の顔を覗き込んで
目を合わせると
「へ、変な意味じゃないよ!
心が満たされるってゆーか
好きだよーって
気持ちに触れたいっていうか
自分だけを
見て欲しいっていうか・・
やだ
もうそんなに見ないで」
茜は
俺をちょっと
こずくと
「なんか熱くなっちゃった(笑)」
そう言いながら
ファスナーを下ろし
パーカーをはだけさせた
そのパーカーも
脱いでしまえばいいのに
「変な意味でもかまへんけどな」
「え?」
「変な意味でも
変な女やとか思わへん。
けど
他の理由の方が
心配やわ」
「・・・」
「寂しいねんな、茜」
そんなに寂しいなら
俺が満たしてやるのに
「なぁ、茜」
「ん?」
「ぎゅってしたろか?」