好きにさせて
第5章 部屋
「え・・やだ、冗談・・」
「冗談やないで?
茜…
なんでこんなに雨降ってんのに
今日ここに来たんや。
俺も茜も明日休みやのに
なんで今日なんや?
寂しかったんやろ?」
茜は
口を閉ざしたまま
少し
目を潤ませた
そんなに寂しいなら
男作ったらええのに
それをせぇへん茜の本心を
俺は分からへん
けど
どんなに強がっても
茜が寂しがってんのは
丸見えやった
「・・帰りたくないんか?」
その言葉で
茜の目は更に潤み
そして
黙ったまま
小さく頷いた
もう
ほっとかれへん
俺は
茜の方に身体を向けると
右手で茜の肩を抱き寄せ
「嫌やったら言えよ」
そう耳元で囁いてから
茜を抱きしめた
・・茜・・・
嫌と言わない茜は
ただじっと
俺に抱きしめられていて
友達以上の感情を
抑えきれない俺は
パーカーの中に
滑り込ませた左手で
Tシャツ越しの
茜の背中を感じていた
ぁぁ・・
久しぶりに抱きしめた相手が
茜で
俺の腕の中にいる
茜の身体は
服を着てても
女独特の柔らかさで
俺は溶けそうになった
「茜・・」
「・・・」
「今、お前の事だけ見てんで」
茜が
そう言って欲しいから
言うてる訳やない
俺は
もう
お前のことしか
見られへんねん
「・・・尚っ・・」