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ある深夜の来店客

第1章 ある深夜の来店客

 その日から彼は店に来なくなった。
 捕まったのかどうかもわからない。
 とにかく俺はショックで、日に日に怒りが込み上がってきていた。


 毎日同じ時間に来ていたのは顔見知りになって俺を油断させるため? 実行するチャンスを狙っていたのか?
 なのに俺はあの人を元気付けたくて笑顔で送り出して…バカみてえ。


 俺は何度目かのため息をついた。
 その時、入口のドアが開いた。


「いらっしゃいま…」


 入ってきたのは、あの時と変わらないヨレヨレのスーツを着た彼だった。
 彼はひどく疲れた顔をして、いつもの席に座った。
 俺の手は震えていた。
 震えた手で警報ボタンを押した。


 数分後、奴は捕まるだろう。
 お前に食わせる飯なんかねぇし。
 よく平気で俺の前に現れたよな!
 俺は微動だにしない彼の姿を睨みつけた。



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