
愛すると言う事…
第7章 episode 7
目の前に広がる海はあの時の海とは違うけど、やっぱり翔さんにしてみたら辛い物でしかないのかもしれない。
泡の立つシャンパンを一口含む。
硝子に移る翔さんは俺の肩に顔を埋めてて見えない。
智「…翔さん」
ずっと、待たせてた。
多分翔さんは我慢してたはずだ。
数えきれない程、重ねてきたキス。
その度に翔さんは俺を抱きたいと言う思いを口にする事なく堪えて来たと思う。
呼んだのに、翔さんは返事をしてくれなかった。
智「……翔さん」
翔「…………ん」
何度目かでやっと声を出してくれた。
せっかく意を決したのに、早くしないと俺の決心が鈍る。
智「……俺」
翔「いい。……このままで十分だ。無理しなくていい」
智「……………翔さんが、安心するなら…俺はいいよ。…不安が無くなるなら、俺はそうしたい」
翔「………」
智「…翔さんの不安が、俺を抱く事で消せるなら……そうしたい」
翔さんの腕に力が込められた。
『…無理なんかしてねぇよ』って呟いて向き合った俺を、やっと顔を上げて見てくれる。
何を考えてるのか…
ジッと俺を見つめてくる翔さんに、俺は照れ臭さも恥ずかしさも全部取っ払って見つめ返した。
ゆっくり…
ゆっくり…
確かめる様に近付いて来る翔さんの唇。
触れる間際で、"止めるなら今だぞ?"と言わんばかりに動きを止めた。
だから。
俺から触れた。
両腕を巻き付けて、翔さんの唇に触れたら後はもう翔さんのペースで。
優しくて温かいキスを繰り返した。
翔「…もう………止めねぇぞ?」
囁かれて頷いた。
ベッドに横になった俺の上で、真剣な表情で見下ろしてくる。
翔「智…」
智「……好き…だから。………ちゃんと、翔さんの事…好きだから」
俺の言葉に、やっと笑ってくれた。
その頬に手を添えて俺も笑う。
何度も降ってくる翔さんのキスに、脳が痺れた。
耳に届く濡れた吐息に、身体が熱くなって。
触れられる手の優しさに、泣きそうになった。
何度も何度も、俺を呼んで。
答える様に、俺も何度も翔さんを呼んだ。
初めて繋がったのは…
身体だけじゃない。
心ごと、俺の全部が、翔さんと奥深くまで…
繋がった気がした。
