
愛すると言う事…
第7章 episode 7
ダラダラとホテルの部屋で過ごしたハワイ初日。
午後になると翔さんもすっかりと立ち直り、俺の腹も落ち着いてた。
だから二人で散歩くらいはしようかと、ホテルから初めて出てみたら、夕方だと言うのに予想以上に暑かった。
それでも日本とは比べ物にならない程、綺麗な夕陽を見る事が出来て。
砂浜を歩いて、ちょっとあの日一人で歩いた事を思い出す。
一人より、やっぱり二人だと気持ちが全然違うと改めて感じた。
翔「何か……同じ海でも、違うな?」
智「………ん」
翔さんも同じ事を思ってたらしい。
砂浜にはパラパラとカップルや家族連れが歩いてて。
子供が波打ち際で楽しそうに笑う声がする。
智「……やっぱ、二人で見ると同じ海とは思えないな」
翔「だろうな。…智が居て、本当良かったよ。じゃなきゃ俺、海嫌いになるとこだったわ(笑)」
智「……俺も。…そんな気がする」
もう太陽が半分以上沈んでる。
ボーッと二人で眺める太陽。
チラッと隣を見れば、翔さんの頬が夕陽に染まってオレンジ色だった。
あの頃。
ばあちゃんが死んでから、一人で生きてきた俺がまさかこんなに誰かを大切だと思える様になるなんて、想像もしてなかった。
未来なんて物すらも考えられず、ただ呼吸を繰り返すだけだった。
大切な何かを見つけられた、それだけで俺は死ななくて良かったんだと思えるから…
ばあちゃんのお陰かもなぁ…
智「…やっぱ………ばあちゃんは俺の事、思ってくれてたのかもな」
翔「そりゃそうだろ?…高校生だったお前がたった一人で生きて来られたんだ。おばあさんに感謝するくらいじゃ足りねぇかもな?」
本当にそう思う。
頷いた俺の頭を撫でて柔らかく微笑む翔さんと、二人で眺める先に沈みそうな太陽が、水平線に光の線を作る。
辺りにはカップルが疎らに居て、肩を寄せ合い水平線を眺めてた。
隣に居るだけで、ホッとする。
微かに触れた翔さんの手。
遠慮がちに掴んでみたら…
キュッと握られ、小さな笑みが溢れた。
