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愛すると言う事…

第8章 《After that episode》


あれから数日…

俺から連絡する事も何となく気が引けて、ずっと待つ日が続いてた。

今日もまた、連絡は無いだろうなぁって思いながら定休日の暇をもて余す。

携帯が音を鳴らしたのは、そんな暇をもて余してた休日の夕方。
『……俺…智、だけど…』と、遠慮がちな声に、思わず顔が緩んだ。

潤「あぁ、この前は悪かったな?」

智『………いや、俺も…ごめん。……連絡もしないで』

潤「仕方ねぇよ、出来なかったんだろ?」

智『…ん、まぁ………話、したいんだけど……』

潤「あぁ、どうする?うち来るか?」

智『……悪い。…そうしたいけど、ちょっとそこまでは行けねぇんだ』

"ふっ"と、先日の後ろ姿を思い出した。

行けないと言ったのは、ここまで歩くのには一人じゃ無理なんだろう。
タクシー使えば何て事はないのに、智は何故か昔からタクシーに乗りたがらなかった。

俺はすぐに気付いてやれなかった自分にちょっとだけムカつきながら、住所を聞いて智のマンションに行く事にした。



運転手に住所とマンションの名前を告げて、タクシーが止まった瞬間…呆気にとられた。


超高級高層マンション。


どこぞのお偉いさんばかりが住んでそうな、首が痛くなる程の高層マンションが目の前にそびえ立ち。

エントランスに入るのもかなり躊躇われた。

自動ドアを通ると警備員が立ってる。
インターホンを押すと返事もなくまた自動ドアが開き中へ進んだ。

高級ホテルの様なエントランスに呆れるどころじゃない。

エレベーターを待つ間、背中にビシビシと警備員の視線を感じた。
乗り込み振り返ると、俺は苦笑しながら思わず警備員に軽く頭を下げてしまう。
がたいのいい彼は、柔らかく微笑んでくれた。



最上階では無いにしても、かなり上の階に部屋がある智。

エレベーターを降りるとまた…警備員が居た。


玄関ドアの前でインターホンを押す俺の背中に、やっぱりビシビシと視線が刺さる。

智「………はい」

数秒の間を空けて顔を出した智に、思わず『…すげぇな』って苦笑を漏らした俺。
智もまた『……俺も初めはそう思った』って小さく笑った。


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