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愛すると言う事…

第8章 《After that episode》


リビングも…

外観通りの高級感で。

最早、俺は言葉も出なかった。
『……俺もやっと最近慣れた』って呟くから、視線を向けたら困った様な顔をしてる。

潤「最近かぁ…まぁ、分かんなくもないな」

智「………本当、マジで掃除とか大変だ」

そこかよ。
まぁこんだけ広けりゃ大変だろうけど…

リビングにある物は全てが高級品っぽくて。
でも、ソファもテーブルも広さに似合わずこじんまりとしてる。

テレビは馬鹿みたいにデカいけど。

ただ、本当に余計な物は無くて。
広さだけが際立つ程、インテリアも小物も殆んどない。


ラグマットの上に腰を下ろしたら、智が何処からか缶ビールを二本手に持って戻って来た。

これだけの高級マンションで缶ビール。

ちょっとホッとする。
これでワインだのシャンパンだの出されたら、マジで落ち着かねぇ。

智「……悪かったな?」

またそう言って、ビールを飲む智。

それから、ボソボソと話し始めた。


一緒に店に居た頃には既に顔も知らない叔父さんの借金を背負わされてたと言う話から始まり。

店を移って間もなく、それを翔さんに片付けてもらったらしいけど…
暫くしてその叔父さん夫婦が連絡をして来るようになり、金の催促をされ始めたと言う。
店にまで来ては財布の中身を根刮ぎ持って行かれた時もあった様で。

このままだと、店も当然そうだけど翔さんにも迷惑が掛かると、智は貯まった金を全て渡す為にここを出た。

智「………やっと…店の連中にも慣れてきて、翔さんを何より大切だって思える様になったのに…やっぱり俺は普通に生きてちゃ駄目なんだなぁって、思ったよ」

当時を思い出してるのか、智の瞳は何処か遠くを見つめてる。

結局、最初で最後の人と一緒に過ごす事も叶わないなら、と智は海に入ったらしい。

生死をさ迷ったと、智が笑った。

病院に居る間の事は人に聞いた話だと軽めに話してくれたけど、相当なもので。

やっと退院出来ると言う日に、医者からマヒが出るかもしれないと言われた様だった。

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