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愛すると言う事…

第8章 《After that episode》


《side 翔》

翔「悪い、後頼んでもいいか?」

机の上でパソコンを見つめてるシゲの背中に声を掛けた。

チラッとだけ振り向いたシゲ。

またパソコンに視線を戻すと『とっとと帰ってください』と、冷たくあしらわれた。

どうも智を一人にしておく事が心配で仕方ない俺は、無意識なんだけど。
落ち着きがないらしく上の空な状態だと言われる。

シゲはいつもその度に"帰れ"と言う。

邪魔だの溜め息が煩いだの、仮にもオーナーだと言うのにそんな事を言って追い返す。

翔「……悪いな?」

シ「いいですよ。…どうせ今日は翔さん居てもする事なんかないですし」

翔「…酷ぇよな?お前」

シ「………早く帰ってください。…また智が無理してるかもしれませんから」

こいつもまた…
智の事を心配してくれる。

本当に人に恵まれた俺たち。

あいつが自分の事は自分でするって思ってるのは、店の全員が分かってる。
人に頼りたくないって、無理する事も。

心配される事、気遣われる事を拒むあいつは昔から一人で生きてきた所為だろう。


"心配する"のと"気を遣う"事は、全く違うのに…


大切だと思うからこそ、心配になる。

店の連中が、必死でなるべく今まで通りに接してる姿に、思わず笑ってしまうけど…
智がそれで満足なら、俺はそれでいい。

笑ってくれるなら、それで…




いつもは二人で歩く帰り道。

普段よりかなり早い時間な上に一人だと言う違和感が拭えない。

俺の右側に、智が居ないってだけでこんなに景色が違って見えるのものだろうか。


『あれ?……翔さん♪』

突然、名前を呼ばれ振り返ると女が居る。

厚めの化粧に少し離れた距離でも匂うキツい香水。

…誰だっけ?


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