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愛すると言う事…

第8章 《After that episode》


結果。

『…………ごめん。…翔さん』と、涙声を絞り出した智を優しく抱き締める翔さんが居て。
その翔さんの背中に腕を回した智が、しがみ付くように服を掴む。


そんな二人を目の当たりにした俺は、一気に全身から力が抜けた。

翔さんの手が、優しくゆっくり智の背中を撫でる。


俺はやっと動ける。

だけど何故か、今度は力が抜け過ぎたせいで動けなくなった。

もう十分分かったのに…


翔「……悪かったな?…潤」

翔さんの、本当に申し訳なさそうな声に返事をする事も出来ず、俺は俯いてた。



ソファに二人が並んでる。

もう帰りたいと思う俺に、翔さんはそんな気が無いとは思うけど何となく……"このままでいいのか?"って言われてる気がしてならない。


智は、まるでさっきとは違って少し恥ずかしそうに俯いてる。

俺に見られた事で、今更ながら羞恥心が湧いたんだろう。


何だか、部屋に漂う空気が重苦しいと思うのは…俺だけか?

いや、俺だけだな。



翔「……智?」

智「…………ん?」

翔「ちょっとコンビニ行ってくるわ」

智「………飯、作ろうか?」

翔「いや、いい。…ビールももうねぇし」

智の頭を撫でて立ち上がる翔さん。

リビングを出る間際、俺に視線を向けてきたその瞳は真剣で。

そこで気付いた。


仕方ない。
そこまでされたら、ケリ付けるしかねぇよなぁ…


翔さんが出ていって沈黙の中、物凄い気まずい雰囲気を破ったのは智だった。

智「………潤。……ごめん。何か……悪かったな?」

潤「…いや、いいよ。………気にすんな」

智「……何か……情けねぇな?…でも、やっぱ失いたくないんだ…」

潤「……うん」

智「…助けてくれたからとか、そんなんじゃなくて……あの人、デカいから…」

潤「あー…まぁ分かるな」

智「………こんななのに…急かしたりしないで、ずっとひたすら待ってくれるなんて…そうそう出来ないと思う」

多分、こいつは知らない。
俺の抱えてる想いも、これからそれを告げようとしてる事も……翔さんがそれに気付いて出掛けてくれた事も。


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